トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.4 中高齢者における運動の意義とこれまでの私の研究活動


現在、『地域中高齢者を対象としたサルコペニア予防のためのポイントと筋トレ教室実施例とその科学的根拠』をオンデマンド配信中ですので、この機会に、中高齢者における運動の意義、そして、中高齢者の方々の健康増進のために私が行ってきた研究活動とその想いについて、まとめてみたいと思います。

セミナーの冒頭でもお話をしていますが、中高齢者における運動の大きな目的の一つは、体力や身体機能がADL(日常生活動作)不全閾値以下になるのをできる限り遅らせ『健康寿命』の延伸を図ることといえると思います。

そのためにはまず、『健康関連体力』を中心にトレーニング効果が期待できる『レジスタンストレーニング』や『持久性トレーニング』、そして『柔軟性トレーニング』などを処方するというのが一般的です。

『レジスタンストレーニング』のトレーニング効果の代表例は筋肥大や筋力増加であり、『持久性トレーニング』の効果の代表例は全身持久力(最大酸素摂取量)であると言えます。

これら2つを1つのトレーニングで同時に向上させようという想いから、東京大学大学院修士課程時代に取り組んでいたのが『血流制限下での歩行トレーニング』です。私の研究活動はここから始まりました。この頃はちょうど祖父が肺の病気で体調を崩していたこともあり、中高齢者の体力の問題について、興味を持って取り組んでいたことを覚えています。

本研究では、下肢の筋サイズと筋力、そして、推定最高酸素摂取量が同時に改善することが証明できました。

しかしながら、その後、この研究に参加してくださった方々に対して、ディトレーニングの影響を測定した際に、元の生活に数ヶ月間戻っただけで、元のレベルまで体力が落ちてしまうのだなといったことを実感しました。

これがきっかけで、順天堂大学大学院博士後期課程時代には、血流制限下のトレーニングのような特殊なトレーニング方法と同時に、誰でも手軽にできて、かつ継続しやすいトレーニングとして、自体重でのレジスタンストレーニングの研究にも取り組んでいました。

大学近くの富里市で中高齢者の方々を対象に、運動教室を開催し、自体重でのレジスタンストレーニングとウォーキングを組み合わせた『コンバインドサーキットトレーニング』の効果について調査しました。

この研究においても、筋サイズと筋力、最高酸素摂取量がともに向上することが証明できました。

その後、博士研究員や順天堂大学助教時代にも、こうした研究に取り組んでいましたが、少しずつ対象の幅を広げて、高齢者だけでなく、若年者や子ども、女性やアスリートなど、様々な方々を対象に研究を進めるようになりました。

このことが、現在の私の研究室が目指すべき道につながっています。

『より強く、より速く、より高く、そして、より健やかに!』を実現するために、年齢・性・体力レベルを問わず、科学的根拠をもとに運動をより良くデザインするための研究を行うとともに、より良い未来のために運動をデザインできる専門家を育成することを目指します。

子どもへの理解が深まれば、高齢者への理解もより一層深まりますし、女性への理解を深めることで、男性への理解もより一層に深まるように感じます。もちろん、アスリートに一点集中で研究をするといったことも素晴らしいことですが、様々な方を対象にすることで深まる知識もあります。

また、私は高校まではサッカーをメインに、大学ではラクロスをしていた背景があり、これらはいずれも、筋力だけでなく全身持久力も求められる競技であることから、何か一つの体力要素をトレーニングするよりも、いくつかの体力要素をともに、いかに効率よく効果的にトレーニングするかといった視点により興味があるように思います。

今後もより多くの方々のお役に立てるよう、研究・教育・トレーニング指導に精進していきたいと思います。

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