トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.9 漸減負荷法@


明日から本学でも授業が開始されます。コロナ対策を実施した中での授業ということもあり、授業準備も大変ですが、学生の学びのために良い準備をしたいと思います。

先月、私が提唱している漸減負荷法(Stepwise Load Reduction Training)に関するResponseがSports Medicineに掲載されました。

2020年にCurrent Opinionとして、漸減負荷法に関する論文がSports Medicineに掲載されたのですが、今回、その論文に対するLetterが届き、これに返答をしたものです。

漸減負荷法とは、『ターゲットとする複数の体力要素を向上させるために必要とされる負荷や強度を各々設定し、これらを高い順から休みなく配列してトレーニングする方法』であり、私が研究を進めているトレーニング方法です。

このトレーニング法に関して現在出版している論文等は下記の通りです。

1. Ozaki Hayao, Abe Takashi, Loenneke JP, Katamoto Shizuo. Response to: Comment on “Stepwise Load Reduction Training: A New Training Concept for Skeletal Muscle and Energy Systems”. Sports Medicine. Online ahead of print, 2022.

2. 尾崎隼朗. 漸減トレーニング:新たなトレーニングの考え方と今後の展望. Strength &Conditioning Journal. 27(10): 2-9, 2020.

3. Ozaki Hayao, Abe Takashi, Loenneke JP, Katamoto Shizuo. Stepwise load reduction training: A new training concept for skeletal muscle and energy systems. Sports Medicine. 50: 2075-2081, 2020.

4. 尾崎隼朗. 漸減トレーニング 〜第3の新たなトレーニングを目指して〜. Journal of training Science for Exercise and Sport. 31(4): 179-184, 2020.

5. Ozaki Hayao, Kato Go, Nakagata Takashi, Nakamura Tomohiro, Nakada Kotaro, Kitada Tomoharu, katamoto Shizuo, Naito Hisashi. Decrescent intensity training concurrently improves maximal anaerobic power, maximal accumulated oxygen deficit, and maximal oxygen uptake. Physiology International. 106(4):355-367, 2019.

6. Ozaki Hayao, Kubota Atsushi, Natsume Toshiharu, Loenneke JP, Abe Takashi, Machida Shuichi, Naito Hisashi. Effects of drop sets with resistance training on increases in muscle CSA, strength, and endurance: a pilot study. Journal of Sports Sciences.36(6):691-696, 2018.

その他、現在1編の新たな論文を投稿中、1編の論文を執筆中です。これらについては、無事に出版が決まりましたら、また改めてお知らせをしたいと思います。

そもそも、この漸減負荷法ですが、初めの研究は私が順天堂大学の助教時代に実施したものです。

私の研究対象の一つであり、趣味の一つでもあるトレーニングですが、当時は今以上に自由な時間が少なく、トレーニングをする時間もなかなか確保できない状況でした。

そこで、短時間で効率的かつ効果的なトレーニングをしなければ・・・と必要に迫られて、自分で実施していたレジスタンストレーニングの効果を検証してみようと実施した研究が6番の2018年の研究です。

やはりヒトは必要に迫られると色々と頭を使いますし、自分で疑問に思ったことや実践していることを、研究で確かめながら発展させていけることは、研究者の醍醐味の一つだと思います。

自分の研究で確かめたことや先行研究の結果を参考にして、自分のトレーニングや指導に生かす。そして、これによって生まれる新たな疑問を先行研究に当たって解決していく。先行研究で解決できなければ、推論によって暫定的な答えを出しながらひとまず実践するとともに、自分の研究アイデアとしてストックして、計画的に研究も進めていく・・・このサイクルが面白いと感じている私にとっては、研究者であり、指導者であり、トレーニーであることは幸運です。

当時、私が在籍していた順天堂大学運動生理学研究室の教授で自転車競技部の顧問もされていた、現名誉教授の形本先生との会話の中で、2018年の筋トレの論文の成果を持久性トレにも生かせないかとの提案を頂き、大学院生とともに予備実験を繰り返して、プロトコルを検討して、持久トレの効果を検証したのが5番の2019年の論文です。

この研究の際には、当時、博士前期課程に在籍していた加藤豪君が共に頑張ってくれました。現在は、日本スポーツ協会でスポーツの普及に携わっています。こんな記事も掲載されていました。

話を戻しますが、2018年の論文のタイトルには『drop sets』と記載をしていましたが、これまでのdrop sets研究との違いを明確化し、さらに2019年の論文の成果と共に、その定義を新たにして提唱させて頂いたのが『漸減負荷法』です。

こうした考え方を解説・提案したのが、2-4番の論文や記事です。日本語の記事については無料公開されていますので、上記のリンクから是非読んでみてください。

そして今回、3番のSports medicineの論文に対するLetterが届き、それに対するResponseを提出したという経緯です。少しでも注目をして頂いている証ですから、嬉しく思います。

折角ですので、次回から少しの間、漸減負荷法についての情報を配信していきたいと思います。

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