トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.7 日本発育発達学会第20回大会B 抄録だけからでも学べること


3月20・21日にオンラインで開催された日本発育発達学会第20回大会に参加しましたので、学会での学びを皆さんに共有したいと思います。本日はその最終回(第3回目)です。

私は時間の関係で、一般演題の発表を拝見することができなかったのですが、同志社大学の石井好二郎先生が発表された『世界陸上・オリンピック日本代表選手に相対的年齢効果は存在する』の抄録を拝見しただけで感じた学びを『抄録だけからでも学べること』の例として紹介したいと思います。

抄録にも記載されていますように、相対年齢効果とは暦年齢の差が学業やスポーツの成績に与える影響のことです。

石井先生の研究では、陸上競技の日本代表選手を対象に、この相対年齢効果が存在するか否かを明らかにすることが目的とされています。

日本陸上競技連盟が公開している『競技者育成プログラム』のp.10に『図1. 2018年の全国大会出場者および日本代表選手の誕生月分布』が掲載されており、小・中学校期の全国大会出場者の相対年齢効果は大きいですが、日本代表選手レベルになるとその効果はほとんどみられないことが図から読み取れるわけですが、こうした情報を石井先生は鵜呑みにされず、自らの手で調査してみたということではないかと想像します。

特にこの場合、2018年のデータのみが使用されていると読み取れますから、よりサンプルを広げたら、本当に同じような結果が得られるのかという疑問は検討されるべきものですし、それを感じられただけでなく、実際に自分の手で調査された石井先生の姿勢には尊敬の念が堪えません。

石井先生の抄録では、『1991年から2021年までの世界陸上・オリンピック陸上競技日本代表選手を対象にしたところ、男子の短距離と跳躍において相対年齢効果が認められ、サンプリングや分析の仕方の違いによって結果が異なったのではないか』と指摘されています。

石井先生の研究では、より広い年数を対象としたサンプルを使用していること、また競技ごとに分けて分析をされていることから、このような結果の違いが生まれたということです。

私は当日の発表を拝見できていませんので、詳細は確認しないと分かりませんが、この抄録から、研究の内容や結果を吟味することの重要性を感じさせられます。

このテーマについては、私が本学で担当している『発育発達老化論』の授業でも取り上げていた内容でしたので、大変勉強になりました。

学会の抄録は学会HPにてPDFで公開されていることもありますので、抄録集だけでも確認をしてみると色々な気づきがあると思います。

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