トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.6 日本発育発達学会第20回大会A 本質に向かって邁進せよ


3月20・21日にオンラインで開催された日本発育発達学会第20回大会に参加しましたので、学会での学びを皆さんに共有したいと思います。本日はその第2回目です。

本日は、学会初日の2番目のプログラムで、前日本発育発達学会会長で大妻女子大学名誉教授の大澤清二先生の特別講演の内容から、学びを共有したいと思います。

講演では、日本発育発達学会の20年と発育発達研究のこれからについてお話を頂きました。その講演内容も素晴らしいもので、大変勉強になりましたが、本日は、本講演で紹介されていた順天堂大学の故・石河利寛先生の記事について共有したいと思います。

私の前任校は順天堂大学で石河先生が所属されていた運動生理学研究室に在籍していましたので、直接お会いしたことはありませんが、講演で紹介されていた記事が気になり、すぐに検索して調べてしまいました。

学会で得た情報をもとに、その出所を自分で調べて納得することは非常に大切なことだと思います。

1983年に日本体育学会・発育発達専門分科会通信に掲載されている『本質に向かって邁進せよ』という記事です。この記事はJ-STAGEで公開されています。

これは非常に短い記事ですが、私が研究者として常々考えているけれどもどこまで突き詰められているかなと反省せざるを得ない内容が端的に多く詰まっており、背筋を正されるような思いでした。

冒頭にはこのように記載されています。

『現在は情報過剰時代である。私の机上にも送られて来る雑誌, 論文などが山のよう積まれ, まったくお手あげの状態である。これからの研究者は論文の数よりも内容を重視し, 少量で密度の濃い論文を書くことが学問の発展に寄与することを弁えなければならない。』

約40年前でも情報過剰と言われていたわけですが、現在はさらにそうだと思いますので、本当に情報を取捨選択することの重要性を改めて考えさせられるとともに、密度の濃い論文が書けているか・・・反省をさせられました。

もちろん、私のようなまだまだ若い?研究者の場合、研究の量も求められることは否めませんが、その質についても突き詰めていかないと・・・と改めて考える良い機会になりました。

続いてこのようなお言葉がありました。

『発育発達分科会にとって一番大切な事は, 年齢に応じた運動刺激をどのような形で与えればよいかということであると私は思っている。』

これは、『年齢に応じた』という部分をライフステージ全体に拡大解釈すれば、発育発達だけでなく、トレーニング科学、そしてスポーツ科学のある意味究極目標だと思っています。

簡潔に言えば、これが私の大きな研究目標ですし、やはり進むべき道はここだよなと改めて強く思いました。

トレーニング研究は、最終的には、『過負荷』や『漸進性』、『特異性』といった原理原則を確固たるものにしていくための営みになると思いますが、そこから広がる可能性をいかに追及していくかが面白いので私は研究をしています。

また、全てを科学的な研究で明らかにできればいいのですが、少なくとも私が生きている間では到底無理だと思いますので、科学を活用しながら、現場で指導をすることにもまた重要で、指導対象の方が、私が提供する運動刺激に対してどう反応してくれるのかを試行錯誤していくことがとても興味深いのです。

記事の最後にあった『いずれにせよ、発育発達の研究は対象者を十分に吟味し、長期間にわたってスケールの大きい, 息の長い研究をすることが大切で, 細切れの研究はあまり意味がないように思われる。重要なテーマほど研究が困難であるのは他の領域でも同じである。困難さを乗り切って重要な研究を達成してもらいたいと念願したい。』とのお言葉を胸に、今後も精進していきたいと気持ちを新たにしたところでした。

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