トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.5 日本発育発達学会第20回大会@ 発育発達研究におけるエビデンス


3月20・21日にオンラインで開催された日本発育発達学会第20回大会に参加しましたので、本日から3回に分けて、学会での学びを皆さんに共有したいと思います。

本日は、学会初日の1番目のプログラムで、本大会長で女子栄養大学教授の田中茂穂先生の大会長講演「発育発達研究におけるエビデンス」の内容から、学びを共有したいと思います。

講演の前半では、田中先生が発育発達研究に関わられた例として、小学生における体重の季節変動と肥満度との関係について紹介をされていました。

標準体重の多くの小学生では冬に体重が増加するが、肥満児の体重発育のピークは夏に来るという話題でした。

田中先生らの研究以外にもいくつかの先行研究があり、おおよそ一致した結果が得られているようでした。

田中先生らがその原因を検討した研究では、5月と比較して、夏休みでは中高強度活動が約10分減少し、座位行動が約20分増加したことを明らかにしており、これらの変化と体重の変化との間に有意な相関は認められなかったものの、休業中の生活習慣の変化が肥満に影響しているのではないかと推察されていました。

例えば、こういった情報を得ることで、現場でも色々なことに発展していく可能性があると思います。

運動指導者の方が、子どもたちの健康のために、夏季休業中の特別運動教室を実施しようと考えることもあるでしょうし、私のような大学教員が、夏季休業中に運動ができる施設や機会を大学周辺の地域の子どもたちに提供しようと動くこともあるかもしれません。

さらに、今回は小学生を対象とした研究でしたが、『休業中の体重増加』という点をピックアップして考えれば、大学生を指導する方が、休業中の体重の変化を含めたコンディションチェックにはより気をつけなければと発想を広げることもあるかもしれません。

いずれにしても、こうした情報に触れることで、色々な発想が生まれてくる可能性があると思います。

講演の後半では、『幼児期運動指針』に関して、エビデンスの重要性について述べられていました。

幼児期運動指針やそのガイドブックには原著論文の引用がないこと、そしてその内容に関するPDCAサイクルがないことを問題点として挙げられていました。

この指針をより充実させるために『幼児における活動量の実態』や『幼児における運動指導のあり方』、『幼児において必要な動作』、『幼児における環境づくり』などについて、さらにエビデンスを積み上げていく必要があると主張されていました。

ガイドブックなどを参照するときには、その根拠はどこにあるのか、といったことを吟味しながら読み進めることは非常に大切なことです。

さらに、どの時期にどのような体力要素を鍛えればいいかといった話題のときに、教科書などでよく引用される『宮下による体力つくりモデル』を例に挙げ、これが公表された当時と比較して、現在、発育が1〜2年前傾化していることを根拠に、体力も早めに発達している可能性があることを指摘されていました。

これらのご指摘については、私が本学で担当している『発育発達老化論』の授業でも取り上げている内容でしたので、やっぱりそうだよな〜と改めて考えさせられた時間でした。

本学会から得た情報をもとに、授業内容を再構成しようと考えたとともに、今後の研究の参考にもなりました。

このように学会を始めとして、様々な場に出向いて情報を得ることは自身の活動を振り返る良い機会になると思います。現在は、オンラインで参加できる学会も多いですので、皆さんも興味のある分野の学会に是非参加してみてください。

我々のような大学教員は、現場の皆さんの参加を心待ちにしています。

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