トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.11 漸減負荷法B 持久性トレーニングにおける効果


引き続き、漸減負荷法について紹介したいと思います。

漸減負荷法とは、『ターゲットとする複数の体力要素を向上させるために必要とされる負荷や強度を各々設定し、これらを高い順から休みなく配列してトレーニングする方法』であり、私が研究を進めているトレーニング方法です。

今回は、この持久性トレーニングにおける効果について説明します。この効果について検証したのが下記の論文です。

Ozaki Hayao, Kato Go, Nakagata Takashi, Nakamura Tomohiro, Nakada Kotaro, Kitada Tomoharu, katamoto Shizuo, Naito Hisashi. Decrescent intensity training concurrently improves maximal anaerobic power, maximal accumulated oxygen deficit, and maximal oxygen uptake. Physiology International. 106(4):355-367, 2019.

前回ご紹介した漸減負荷法を用いたレジスタンストレーニングについての研究結果を、前任校の研究ミーティングで紹介した際に、順天堂大学の名誉教授の形本先生(当時は教授)から、漸減負荷法を持久性トレーニングにも生かせないかとご提案頂き、研究を進めたのがきっかけです。

エネルギー供給系トレーニングにおいては、有酸素パワー(最大酸素摂取量)、無酸素パワー(最大無酸素パワー)、無酸素性エネルギー容量(最大酸素借)の3つを向上させることが、まずは大きな目的になると考えられます。

例えば、かの有名なタバタトレーニングは、この3つのうち、有酸素パワーと無酸素性エネルギー容量の2つがともに向上するトレーニングとして有名です。しかも1セッションあたり4分程度と非常に短い時間でこれが達成できることが魅力です。

それを証明した論文が下記の論文です。

Tabata et al. Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2max. Medicine & Science in Sports & Exercise. 28(10):1327-1330, 1996.

田畑先生が2019年にもタバタトレーニングに関する総説論文を執筆されていますので、こちらも参考になると思います。

Tabata. Tabata training: one of the most energetically effective high-intensity intermittent training methods. The Journal of Physiological Sciences. 69: 559-572, 2019.

タバタトレーニングについては、このメルマガのvol.3でも簡単に紹介をしていますので、宜しければこちらもご参照ください。

話を戻しますが、このようにタバタトレーニングは、この3つのうち2つを向上させますが、これら3つを全て同時に向上させるトレーニングはこれまでになかったので、せっかくならそれを目指そうと考えて、研究を進めました。

これら3つを向上させるために必要な強度という視点で考え場合、その向上のために最も高い強度が必要なのは最大無酸素パワーであると考えられ、最も低い強度で構わないのは、有酸素パワーであると考えられます。

繰り返しになりますが、漸減負荷法とは、『ターゲットとする複数の体力要素を向上させるために必要とされる負荷や強度を各々設定し、これらを高い順から休みなく配列してトレーニングする方法』ですから、無酸素パワー→無酸素性エネルギー容量→有酸素パワーの順に強度を漸減しながら、全てを刺激できる運動プロトコルができれば、これら3つを同時に改善できるだろうと仮説を立てたのです。

実際に、最大無酸素パワーが出現する強度から、最大酸素摂取量に相当する負荷を少し下回る負荷まで、徐々に強度を落としながら、トレーニングを行ったところ、有酸素パワー(最大酸素摂取量)、無酸素パワー(最大無酸素パワー)、無酸素性エネルギー容量(最大酸素借)の3つが向上することが証明できました。

上記の論文に記載されている方法を忠実に再現しようとした場合、いくつもの生理学的測定をする必要がありますので、今後はより効率的で実用的な方法を模索していきたいと思っています。

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