トレーニング科学・発育発達老化

 尾崎研究室
 
 東海学園大学スポーツ健康科学部

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  コラム

vol.10 漸減負荷法A レジスタンストレーニングにおける効果


前回に引き続き、漸減負荷法について紹介したいと思います。

漸減負荷法とは、『ターゲットとする複数の体力要素を向上させるために必要とされる負荷や強度を各々設定し、これらを高い順から休みなく配列してトレーニングする方法』であり、私が研究を進めているトレーニング方法です。

今回は、このレジスタンストレーニングにおける効果について説明します。この効果について検証したのが下記の論文です。

Ozaki Hayao, Kubota Atsushi, Natsume Toshiharu, Loenneke JP, Abe Takashi, Machida Shuichi, Naito Hisashi. Effects of drop sets with resistance training on increases in muscle CSA, strength, and endurance: a pilot study. Journal of Sports Sciences.36(6):691-696, 2018.

研究の背景として、とりわけ、トレーニング実施時とトレーニング効果の評価時において、同一の運動様式を採用している場合には、全体的な傾向として、より高い負荷を用いたレジスタンストレーニングでは最大筋力が、より低い負荷では局所的な筋持久力が向上しやすいことが分かっています。

さらに、筋持久力の改善率には、負荷だけでなく、疲労度の程度、つまり、どこまで追い込むかが影響するため、挙上が出来なくなるまでトレーニングを継続した方が、そうでない場合と比較して、筋持久力の改善率が高いことが示されています。

そこで、筋肥大に加えて、筋力だけでなく、筋持久力も同時に、かつ効率的に改善するためにはどうしたら良いかを考えて、検討したのが上記の論文です。

最大筋力が向上するような負荷から筋持久力が向上するような負荷まで休みなく負荷を漸減しながらトレーニングすれば、これが実現できるのではないかと考えたのです。

この研究では、下記の3つの条件でトレーニングをしています。

@ 80%1RM×3セット(セット間休息3分間)
A 30%1RM×3セット(セット間休息90秒間)
B 80・65・50・40・30%1RMと負荷を漸減するトレーニング(各負荷間での休息は最小限)

いずれの条件でも、各負荷で挙上ができなくなるまでトレーニングを継続しました。

その結果、筋肥大は全ての条件で認められましたが、最大筋力が向上したのは@とB、筋持久力が向上したのは、AとBでした。

つまり、仮説通り、Bの条件でのみ、筋肥大に加えて、筋力と筋持久力が向上したのです。

さらに、トレーニング時間もBで最も短く、効率が良いトレーニングであると言えます。

詳細については論文を是非ご参照ください。

本研究では、全ての負荷で、挙上が出来なくなるまでトレーニングを継続しましたが、例えば、今はやりのVBT(Velocity Based Training)のように挙上速度を基準に、もしくはRPEなどを基準として、各負荷で追い込むまで実施せずに、負荷を漸減する方法など、様々なパターンを検証することで、さらに効果的かつ効率的なトレーニングになる可能性があると思います。今後も検証をしていきます。

次回は持久性トレの漸減負荷法について紹介します。

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